AKO DOMAE 堂前亜子

静謐と余白の陶

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遠回りしてたどり着いた、陶芸家の入り口

堂前亜子が、陶芸家として自分の作品を世に出すまで、それは決してまっすぐな一本道ではなかった。両親が陶芸を本職とする家庭に生まれ、幼い頃から土に触れて育った。父が作った絵皿で食事をし、父のDIYした陶製のタイルが貼られたお風呂に入った。粘土で工作をしたり、父が作った素焼きの皿に絵を描いて遊んだ。そんな陶芸サラブレッドな家に生まれながら、どこか一般的な会社勤めへの憧れもあり、美大を卒業後はさまざまなアルバイトをしながら過ごした。そんな中、父に「手に職を付けておいた方が良い」と勧められて、瀬戸の窯業訓練校へ入学、初めて陶芸の基礎を学んだ。その後、ワーキングホリデーを利用し、オーストラリアの陶芸家の元で、一年間働いた。帰国後は東京のアートギャラリーに勤め、アートを「売る」仕事に携わる。作家と頻繁にやり取りする中で、自分が作ったものに第三者が価値を見出して買うということが、いかに凄いことかというのを実感した。次第に自分の作品を作りたい、という思いが初めて芽生えた。その思いを持って函館に戻った堂前は、父の工房で一人の陶芸家としての道を歩み出した。

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和と洋を内包するものを作りたい

作品のテーマとして、「和と洋の中間地点にあるものを作りたい」と堂前は語る。堂前が育った函館は、日本で最初に開港した港を擁し、建築、食、宗教と様々な外国文化の融合が見られる街だ。幼い頃からそうした環境で育った堂前には、和と洋が共存することは何ら自然なことだったのかもしれない。オーストラリアでは日本人よりも日本を好きで日本文化を尊ぶ人たちに会った。堂前が弟子として働いた陶芸家も日本の陶芸技術を学び、活動する作家だった。外から日本を見ることで、侘び寂び、静、といった和の精神が美しいと感じた。一方で、オーストラリアでは、自宅にオブジェやアートを飾ったり、キャンドルを灯したりして、生活空間とモノ、人の暮らしが理想的な関係で作用する様に、憧れを抱いた。こうした経験から生まれた作品の一つが、枯山水を彷彿とさせるオブジェ、RIPPLE(波紋)だ。和を感じさせる佇まいながら、ミニマルに削ぎ落とされたデザインがモダンで、洋室においても違和感なく馴染む作品だ。

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白が際立たせるカタチ

函館の港から徒歩5分の場所に暮らす堂前。ある夜、函館の港を散歩していると、月が照らす海面に魚がチャポンと跳ねて消えていき、水面に美しい波紋が残った。その光景を作品にしたのがRIPPLEだ。もっちりと膨らんだ形のOMOCHIは、お正月の鏡餅のフォルムの可愛らしさから生まれた。堂前は幼い頃から粘土を捏ねて育ったこと、大学では彫金を学んだこともあり、特に立体物−カタチに強い興味を持つ。散歩をしながら眺める空や雲、料理中に手に取る玉ねぎの形−そんな、日常の中で出会う景色や何気ないものたちからインスピレーションをもらうことが多い。そのものの形たらしめている、最も特徴的な部分を際立たせ、その他の要素を削ぎ落とすことで、独自のカタチに昇華させる。シンプルでミニマルなカタチを引き立てるのは、ふんわりと均一にかけられた白の釉薬だ。幼い頃から、父が作った絵付けの皿で食事をし、床、壁、天井が全て異なる色で塗られたカラフルな家で育った。色に囲まれて育った堂前は、白への渇望があったのかもしれない。堂前の作品は、静謐で余白を感じさせる。空間に置かれること、人が使うことで作品が完成するように。素肌のような生成りを纏った作品は、手にする人の暮らしに寄り添い、息づいていく。

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愛知県瀬戸市生まれ、北海道函館市育ち
秋田公立美術工芸短期大学 卒業
愛知県立窯業高等技術専門校 卒業
オーストラリアにて陶芸家のもとでアシスタントを経験
2020年より函館にて作陶活動開始