Rukaの作るガラス作品の魅力は、その不完全さにある。ぽってりとした厚みのあるグラス、その大きさに対して太めのステム(脚)。ガラス特有のゆらぎをより映し出す、おおらかな形。ほんの少し傾いていたり、歪んでいたりする、どこか愛嬌のある不完全さ。Rukaのシグネチャーアイテムであるワイングラスは、ワインが入る底の部分をほんの少しステム側へ侵食させ、ステムの付け根にラインを入れるという独特の仕立てになっている。(通常は、底のラインとステムの付け根のラインがきっちり揃うのが一般的だ。)見た人に「お?」と思わせる、ちょっとした違和感を忍ばせるのがRuka流。彼女はそれを、“遊び”や“野暮ったさ”と表現する。インスピレーションの源は、生活の中での“見間違い”。ボトルが一瞬曲がって見えた錯覚や、映画・アート作品を見た瞬間の印象など、日常の中のふとした気づきを作品に落とし込むことが多いという。大きな球のついたガラスのポットは、円柱の上に球が乗ったアート作品を見たときに思いついたアイデアだ。
RUKA glass
不完全さが愛おしいガラス

作品に忍ばせる遊び

ガラスと私
ガラスを始めたのは2020年。それまでは文系大学を卒業し、会社員として働いており、美術や工芸とは無縁だった。ただ、中学生時代に美術部で溶解炉を使いシーグラスを溶かした経験があり、ガラスはずっと心の片隅にある“憧れの存在”だった。何か新しいことを始めたいと思った時、現在通うガラス工房の存在を知り、体験教室の門を叩いた。初めて工房を訪れた日、溶解炉の蓋が開き、窯の中でガラスが溶けているのを見た瞬間に、ブルっと身震いするほどの衝撃を受けた。1200度にも達する熱を帯びて赤く光る液体の、自然そのものの美しさとエネルギーに圧倒されたのだ。その瞬間、「絶対にガラスをやろう」と心に決めた。

自然の力に委ねる
制作のモットーは、「できるだけ自然の力に任せる」ということ。吹きガラスにおいては、溶けたガラスを竿に巻き取り、口で空気を吹き込み、回しながら形を整えていく。ガラスは陶芸のように直接触れられない上、液体なので、重力や遠心力の影響を大きく受ける。だからこそ、自分の理想形に力で持っていくよりも、ガラスが本来“動きたい形”へ向かうのをそっと誘導し、少しだけ手を添える──そんな姿勢を大切にしている。あまり手を加え過ぎず、完璧を求め過ぎず、ガラスが持つ自然な現象や本来の姿を生かす作品づくりを心がけている。そうして生まれるナチュラルな佇まいの作品は、どこまでも自然体で純粋無垢。まるで、Ruka本人の人柄をそのまま映し出しているかのようだ。

- 1993
- 福島生まれ
- 2020
- 青樹社硝子工房にてガラスを学ぶ
- 2023
- 作家活動を開始